恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第24話「結婚式 ~ Shizuka ~」

結婚式の準備は、ウェディングプランナーもおらず、イベントとして担当してくださる方も専門外で、
なかなか話が進まず、「ほんまに結婚式できるんかなぁ」と思っていた。
10月に大阪で、双子の姉の結婚式があり、峻平くんと出席しつつ、
自分たちの結婚式の計画が練り足りないように思えて、不安にもなった。
とはいえ、峻平くんとはお互いのイメージする結婚式が一緒で、
当日の服装や披露宴での両親へのプレゼントなど、案を出し合うのが楽しい。
アウトドアウェディングなので、会場の伊良湖緑地公園の芝生にレジャーシートを敷いて、
青空の下、自分たちも来る人たちもラフな格好でのお祭りのようにしたいと思った。

ずっと晴れるとばかり思っていたけれど、天気予報が不安定で、迎えた結婚式当日は、想像以上の雨風でびっくりした。
でも、準備に色んな人が来てくれて、始まる前から人の温かさを実感した。 

前撮りで本格的なドレスは着せてもらったので、オフホワイトのゆったりしたドレスを着て、寒かったのでパーカーをはおり、
峻平くんは白いシャツに紺のニットのベストを着て、蝶ネクタイ。二人おそろいの白いスニーカー。
私の頭には、一番上のお姉ちゃんが作ってくれた花かんむり。
双子の姉も先月の結婚式でお姉ちゃん作の花かんむりをつけた。お姉ちゃんは私の分も「作るで」と言ってくれていた。
式には、甥っ子にも、ケンケンにも重要な役割で登場してもらった。

リングボーイケンケン

披露宴の計画は、緑地公園しか考えてなかったので、魚市場での披露宴で、席が足りるのかなあと思った。
でも、会場に行ってみると、プロジェクトの人たちがテーブルや席をいっぱい準備してくれていた。
雨は降り続いているけれど、盛りだくさんのタイムテーブルで、ワイワイ楽しく進んでいき、喜びいっぱい、楽しさいっぱい。
同時に、大阪や遠方から大切な人たちが駆けつけてくれているのに、
一人一人とゆっくり話せず、たいしたものも渡せず、申し訳ない気持ちにもなる。

あっという間に両親へのお手紙の時間となった。
壇に上がってもらった両親の顔を見ただけで、涙がこみ上げた。
母と三人姉妹という家で、父が常に私たちをやさしくおおらかに包み込んでくれた。
明るい母のもと、我が家は常に笑いが絶えなかった。
そこから巣立って、新しい土地で、新しく、峻平くんと家庭をつくっていく。
父と峻平くんはどこか似ている。
峻平くんを信じて、がんばっていこうと思う。

両親へのプレゼントは、地元の農家さんのお米を、自分たちが生まれた時の重さ分入れて渡した。
お互い温かい家庭に恵まれ、ここまで大切に育ててもらったのだから、これからはお互いがお互いを大切にしていきたい。

披露宴の結びは、私たちと両家でお客様たちに向けての餅投げ!
私が育った辺りでも、峻平くんが育った辺りでも餅投げという風習はなかったので、
たくさんのお餅やお菓子をみんなに撒いて、めっちゃ楽しかったし、めっちゃ盛り上がった。

餅投げ

ホテルでの二次会には、60人くらい集まってくれた。
ビンゴの賞品として、キャベツ、メロン、とうもろこしを用意していたところ、
二次会に来てくれた農家さんがトマト、スイカ、ブロッコリーをその場で景品に追加してくれて、会場が盛り上がった。

翌日は雨が降っておらず、うすぼんやりとではあるけれど、海からの日の出も拝めた。
遠方から来てくれたみなさんに、「またぜひ天気のいい時にも来てな!」と言って見送る。
嵐のような天候の中、お祭りのような時間が過ぎ、楽しかったけど、気を張っていたことにも気づく。

みんなと別れた後、ホッとしながら峻平くんとの出会いから今までを振り返ってみる。
最初にテレビで見た田原市、名古屋からのバスで田原に来た時のこと、サンテパルクたはらでのお見合い番組収録、
紹介映像で見ていた峻平くん、実物の峻平くん・・・

峻平くんとのこれまでの1年―――――
田原で会ったり、大阪や東京で会ったり、毎晩電話したり・・・

入籍し、一緒に住み始めたものの、結婚式はずっと先だろうと思っていたので、こんな形で挙げられてうれしかった。
去年番組に出たときはテレビに出るのが恥ずかしいと思っていたけど、
結婚できて、たくさんの人に祝福されて田原市で生活すると思うと、番組に出てよかったな。

うまく言えないけど、峻平くんに感じた印象と、渥美半島の自然に感じた印象は重なる気がする。
やさしくて、誠実で、懐が深い。

これから、たいへんなこともいっぱいあるだろうけど、初心を思い返して、楽しんでいきたい。

柴田夫妻

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

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