恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第25話「結び(最終話) ~ Shunpei ~」

変わらず雨が降り続けている、魚市場での披露宴。
申し訳なさも色々あるのに、集まってくれた昔からの友達は、
変わったシチュエーションでの結婚式や披露宴を楽しんでくれている。

にぎやかに進んできた披露宴も、両親へのお手紙披露の場面となった。
未熟なぼくを信じて、大切な志寿香を託してくれる志寿香のご両親の気持ち、
心配もかけてきたのに、大らかに見守り続けてくれている自分の両親の気持ち。
先月大阪で行われた志寿香の双子のお姉さんの結婚式の時や、両親への手紙を考える時に、
これまでの自分の人生や、志寿香が生きてきた道を改めて振り返った。
自分はこれからもっと強くならないといけない。

今日一日だけでも、何度も何度も涙がこみ上げつつ、披露宴のフィナーレ、餅投げはお祭りのようで盛り上がった。

餅投げ

結びは、参列者みんなでの記念撮影。
東京から渥美半島に車で引っ越してきた早朝、恋路ヶ浜で日の出を迎えた時は一人だった。
同じ恋路ヶ浜に大勢の人たちが集ってくれて、結婚式や披露宴を開けたなんて夢みたいだ。

結婚式集合写真

披露宴がお開きとなった後は、海辺のホテルを会場に自分たちで司会をする二次会を行い、特産品のビンゴなどで盛り上がった。

明けて翌日、両親や友達を見送り、志寿香と二人でホッとしたところで、幸せや感謝の気持ちに包まれた。
東京からやってきて、畑仕事など何もわからないぼくに、色々教えてくれたHappinessあつみのヒロさん、
陽三さんやお世話になった地域の人たち、元気ネットの人たち、番組に誘われなければ志寿香との出会いはなかった。
志寿香と出会ってから入籍するまでの1年は、あっという間のようでいて、とても中身が濃かった。
一緒に暮らし始めてから今日まで・・・
結婚式の準備は変則的でたいへんなことも多かったけれど、色んな人たちの協力で無事に形となった。
これからこの地で生活をして、お世話になった人たちに恩を返したい。
東京の友達にも、志寿香の大阪の友達にも遊びに来てもらいたい。

渥美半島で行ってみたい場所はまだまだたくさんある。
山も海も町もお店も、出会いたい人やお祭りやイベントも・・・
半島を拠点に、フェリーに乗って伊勢神宮にも行ってみたいし、近くの島にも行ってみたい。

夫婦や家族として暮らしていくことは、いいことばかりではなく、たいへんなことも多いと思うけど、
お互いが年をとった時に笑い話になったらいいな。

志寿香にも語り続けてきた自分の夢・・・生活の中に、命や農を感じられる場所をつくりたい、という想い。
それはきっと、家庭づくりにも通じるんだと思う。
ぼくを信じて人生を預けてくれた志寿香を守り、絶対に幸せにしたい。

2014年11月2日付「朝日新聞より」伊良湖岬灯台

 

 

 

 

*メインストーリーは今回で結びですが、次回から「おまけ」が3つございます。

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

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