恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第22話「結婚式準備 ~ Shunpei ~」

伊良湖岬観光協議会は、渥美商工会岬プロジェクトとして、活性化のために、
ロゴマークやキャッチコピーを募集したり、様々なイベントや周遊マップなどを手掛けていくそうだ。
ぼくと志寿香は、いつの間にか、プロジェクトの広告塔や観光大使みたいな役割として、お手伝いすることになった。
不思議な展開だ。

ウェディングイベントは、11月1日の土曜日に決まった。
公開結婚式として、企画・デザイン会社の女性が担当してくれることになり、何度か打ち合わせをして、
当日のタイムテーブルや、渥美半島の産物を使った演出などを考えていった。
結婚式は、恋路ヶ浜の幸せの鐘モニュメント付近で、披露宴は、新しくできた伊良湖緑地公園で行われる。
アウトドアウェディングが近頃人気だということは知っていて、
志寿香と一緒に、インターネットなどを参考に、結婚式当日の衣装を決めていった。
ぼくも志寿香もカジュアルな結婚式にしたかったし、前撮りで結婚衣装は着させてもらったこともあり、
アウトレットで気楽な感じの衣装を選んだ。
足元は、二人でおそろいの白いスニーカーを履くことにした。

結婚式自体初めてなのに、前例がないような形での開催で、東京や大阪の家族や友人に加え、
田原市でお世話になっている人たちに声をかけたり、当日出してもらう屋台なども、
「みんなのたはら元気ネット」の人たちにお願いしたり、手探り手作りで準備していった。

あっという間に時が過ぎ、結婚式の前日。
午前中、志寿香がウェディングケーキをデコレーションした。
Happinessあつみの看板メニューでもあるシフォンケーキを2段に重ねてクリームを塗ったり、
マジパンで二人の顔や動物を作って飾り付ける。
夕方から夜遅くまでは、元気ネットのメンバーと一緒に、披露宴でふるまう豚汁を作った。
地元産の野菜や肉を使って、でっかい寸胴鍋に・・・

豚汁

みんなでワイワイ準備しながらも、明日の段取りもフワフワだし、天気も心配だし、
本当に結婚式できるのかなぁ、と思っていた。

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

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