恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第4話「告白 ~ Shizuka ~」

明けて二日目。めっちゃいいお天気!
朝早くから、海の近くのゴルフ場でのフリータイム。その後いよいよ男性からの告白タイム。
スケジュールは忙しいけれど、初めて来た渥美半島は、空や海や山の景色がやさしくて癒される。
緑の芝生の上にパラソルがいくつも並ぶ会場で、一人10分ずつ目当ての男性とお話する。
昨日一緒にお宅訪問をした5人がそのまま吉田くんを希望した。

5人が同じパラソルの下で待っていて、一人ずつ、少し離れた吉田くんのところへ行って話す。
ライバルというよりは同じ緊張を抱える仲間という感じだった。
一人が帰ってくると「何話した?」と聞き合って、まるで面接のよう。
私は順番が最後だった。
ドキドキしながら待っていると、ようやく自分の番になり、と同時にスタッフが、
「もうすぐ終了時間になります!」と大きな声で言った。
えー!?と思って慌てて吉田くんのところへ走って行くと、
お互いに時間がないということで逆に緊張が崩れて、笑顔で話すことができた。
みんなが言っていた通り、吉田くんは「ここでやっていけますか?」と、
まるで面接官のように、私にも平等に質問をした。
私は「はい、大丈夫です」と答えた。

移動のバスの中で、最終的に気に入った男性の名前を書くことになり、私はやはり「吉田峻平くん」と書いた。

サンテパルクたはらで昨日と同じように114人の女性と41人の男性が並び、
男性の側が気に入った女性の前まで駆け寄り、リボンのついたメロンを差し出す。
メロンは田原市の特産物らしい。
告白の順番は演出なのか決められていて、アイウエオ順ではなかった。
いつ吉田くんの番になるのか、ドキドキしながら待っていた。
思いのほかたくさんカップルが成立し、会場の暑さが気になってきた頃、「吉田峻平くん」の番になった。
まさか来るとは思ってなかったけれど、吉田くんは私の前に立った。

カメラの前で、吉田くんが話す。
「この二日間で、柴田さんのことをもっと知りたいと思いました。
これからたいへんかと思いますけど、二人で未来をつくっていきましょう」
目の前に差し出されたメロンを、私は両手で受けとった。

うれしいのと照れくさいのと、吉田くんを希望した他の子に申し訳ない気持ちと入り混じって、涙が出そうになる。
みんなが拍手してくれる中、私たちは、外に用意されていたカップル用のテントに向かって歩いた。

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

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