恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第23話「結婚式 ~ Shunpei ~」

結婚式当日は雨だった。
それも、荒天と表現しなければならないほどの天候。
式の舞台となる恋路ヶ浜・幸せの鐘モニュメント付近がどうなっているのか心配だった。

幸せの鐘のモニュメント

朝、志寿香と二人で恋路ヶ浜に着くと、すでに大勢の人たちが集まっていた。
結婚式用のカラフルなプレートやリボンでデコレートされたモニュメントの近くで、
プロジェクトのメンバーや、知らない人までテントの設営を手伝ったり、土嚢を置いたりしている。
海の近くで、風雨が強まる中、ぼくたちの結婚式のために、みなさんが一生懸命に動いてくれている。
その様子を見ただけで涙がこみ上げてきた。
ぼくが手伝おうとすると、
「ケガしたらたいへんだで、あっちで見とればいいよ」「自分たちの準備しりん」と思いやってくれて、
伊良湖の人たちは本当にいい人たちだとまた思った。
東京や大阪から今まさに向かってくれている家族や親族、友達にも申し訳ないくらいの天候だが、
ここまで荒れていると逆に吹っ切れるような気持ちになる。
この状況で楽しもう、楽しんでもらおう・・・

参列者が集まる前に新聞社複数の取材が始まった。
二人で選んだ衣装を着て、お見合い番組の時のネームプレートを付け、足元はそろいのスニーカー。
ケンケンも連れての結婚式&披露宴だ。

お昼の開始が近づき、強まったり弱まったりする風雨の中、バスや車が駐車場に集まり、参列者がテントの下に集合した。
ぼくたちは、予定通りトラクターに乗って入場。天候が悪い中でも、みんなが盛り上がってくれた。

トラクター

志寿香の甥っ子くんがリングボーイを務めてくれての指輪交換や、ケンケンが証人となって前足で朱印を押してくれた誓いの言葉、
誓いのキスや鐘を鳴らし、無事結婚式は結び。
途中、志寿香が持っていたビニール傘が吹っ飛ぶくらいの風だったが、ずっと笑顔だった。

 

伊良湖緑地公園を使っての披露宴の予定が、会場を魚市場に移して開催。
食事は、三河鶏の炭火焼鳥や、海鮮丼、しらす丼、昨日一緒に手伝って作った豚汁などなど、
地元の有志の方々が出店してくれた。
アルコールやジュースの販売では、粕谷夫妻も手伝ってくれた。
雨は降り続けているけど、魚市場の屋根の下、ホットな披露宴。
司会は結婚式に引き続き、元気ネットでお世話になっている先輩だ。

ぼくがお世話になっているバラ農家のバラの花びらや伊良湖に縁のある四つ葉のクローバーをふんだんに使っての贅沢なフラワーシャワー、
高砂の周囲は渥美産の鉢物で飾られ、志寿香のブーケには、渥美の花やブロッコリーがあしらわれている。
ステージでは様々な田原市にちなんだライヴが行われ、みんなで一体となって楽しんだ。

フラワーシャワーフラワーシャワーブーケウエディングケーキ

途中、田原市長も来てくれて、マンダリンと歌を披露してくれた。
ぼくたちも、「君について行こう」という歌を、全く知らないけど(笑)、市長とともに歌った。

3年前、渥美半島に着いた時は、たった一人だったのに、志寿香と出会え、大勢の方々に祝ってもらっての披露宴。
感無量だった。

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

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