恋路ヶ浜LOVEストーリー

伊良湖岬の先端にある雄大な浜辺には、万葉の時代から恋にまつわる様々な伝説があった。
その浜はいつしか「恋路ヶ浜」と呼ばれるようになった。
現代の恋路ヶ浜に舞い降りた、ある男女の縁結びの物語・・・

第13話「秋~冬 ~ Shizuka ~」

11月、峻平くんが東京で行われる「スター農家発掘オーディション」というイベントに出ることになった。

私にも聞かせてくれるような農業の夢をYouTube上で語り、予選を勝ち抜いての本選出場。
全国からの応募者のうち、8人だけのファイナリストに選ばれたそう。
スター農家発掘オーディション峻平くんは声高に主張するタイプではなく、静かに大切なことを語り、結果支持されることが多い。 
渋谷の会場に私も駆けつけて、峻平くんの発表を聴いた。

賞には入れなかったけれど、華のある場所に行っても動じないところがかっこよかった。

会場で、峻平くんのご両親と弟くんに初めてお会いした。
お父さんは峻平くんによく似ていて、お母さんはとても温かみのある明るい方。
弟くんはさわやかでかっこよかった。

そのまま食事に出かけ、楽しい時間を過ごした。
東京の夜景東京には3日間滞在し、峻平くんの友達にも何人か会った。

12月は23日の祝日に田原市に行って、
峻平くんや田原のお友達とHappinessあつみのカフェでクリスマス会をした。

年が明けて1月、我が家での父のお誕生会に、峻平くんが参加してくれた。
私には3つ上の姉と、双子の姉がいる。
姉や姉の家族が一気に実家に集まると「峻平くんが引いちゃうかな?」と心配してくれて、
時間差でやってきた。
大阪の女三姉妹の我が家は、みんなよくしゃべる。
にぎやか!
東京の男兄弟で育った峻平くんがいつもよりおとなしく見えたけれど、
峻平くんも楽しかったみたいで安心した。

この3ヶ月の間に、お互いの家族にお互いを紹介し合えてうれしかった。

日原いずみ

日原いずみ

1973年2月4日、愛知県渥美町(現 田原市)生まれ
早稲田大学卒業後、テレビ番組のAD、現代美術作家助手などを経て、
処女小説が講談社「群像」新人文学賞で最終候補作となったのを機に執筆活動を中心としている。
著書に『チョコレート色のほおずき』(藤村昌代名義:作品社)、『赤土に咲くダリア』(ポプラ社)がある。

Go To Top